- 通常価格
- ¥20
- セール価格
- ¥20
- 通常価格
- ¥20
- 価格
- あたり
シャネルジャケットを羽織ったとき、「前を閉じていないのに、なぜこんなに形がきれいなの?」と思うことがあります。
前と同じ服なのに何となく決まらない。アラフォー・アラフィフになると、そんな小さな悩みが鏡の前に現れます。
そんな日に黒いヴィンテージのシャネルジャケットを羽織ると、インナーとデニムがユニクロの4,980円でも、いつもの服が急にきりっと見えました。
その理由はブレードやボタンだけではありません。細く分かれた身頃、縦に走る縫い目、裏地、裾のチェーン。CHANELらしい形は、見えないところでつくられていたのです。

肩やウエストの線が変わり始めても、細かなパネルで立体をつくるジャケットなら、服のほうが今の体へきれいな線を添えてくれます。
価格だけを見れば高くても、デニムの日にも手が伸び、年齢を重ねても着る回数が増える。縫製のよい一着が「結局おトク」と感じられるのは、そんな日常が重なるからです。
布は平面、体は立体。その間をつなぐのが「パネリング」です。身頃を縦長のパーツに分け、縫い合わせながら肩、バスト、背中、ウエストの曲線をつくります。
これは90年代だけの特徴ではありません。当店が16年間扱ってきた、1980年代から2000年代、2015年頃までを含む作品にも、細かな縦の切替を持つジャケットが数多く見られます。
今では自然に見えるこの構造も、女性が動きやすい服をつくるため、ガブリエル・シャネルが縫製へ時間をかけて追った工夫の一つでした。
パネルが多ければ、それだけで名品というわけではありません。
モデルや素材、目指すシルエットによって、パネルの数も位置も違います。細かなパーツを裁ち、左右の柄を合わせ、裏地まで組み立てた仕事は、表と裏を一緒に見ると分かります。

スーツで手に入れたからといって、いつも上下をそろえなくてもいい。スカートはタートルネックや白いシャツへ。ジャケットはカーディガンのように、デニムやレザースカートへ。
仕立てがきれいなら、ほかは気負わなくて大丈夫。冒頭のユニクロ4,980円の組み合わせも、その一例です。
モデルのビルギット・コスも、ヴィンテージのシャネルジャケットをデニムへ。仕立てがあるから、ほかを頑張りすぎなくても絵になります。
Vogue「How Top Model Birgit Kos Gets Runway Ready」
パネリングや裏地の考え方は、スーツだけでなく、ワンピースやコートにも現れます。表のデザインを楽しんだあとに縫い目を追うと、CHANELの服はもう一度おもしろくなります。
柔らかな服の撮影では、肩や裾のラインを何度も整えることがあります。ところが、状態よく残ったヴィンテージCHANELには、ハンガーへ掛けただけで形が決まり、ツイードの厚みまで写真へ現れる一着があります。
適切にケアされた個体を見ると、縫製の良さは新品のときだけの話ではないと感じます。羽織ると、体を締めつけるより、ふわっと包まれるよう。
表地の縦線を目で追いながら裏返すと、裏地にも同じリズムが続きます。古いジャケットには、シルクの裏地へ縦のキルティング状の縫いが入るものも。内側を隠すだけでなく、柔らかなツイードと一緒に動くように考えられています。
NGV所蔵の1970年頃のCHANELスーツでは、ウールブークレ、シルク裏地、縦のキルティング、裾の金属チェーンまで確認できます。

そして縫い目の内側には、表から見えない「縫い代」があります。余裕が残っていれば、そこから布を出せる場合がある。将来の変化を受け止める小さな余白です。
パリに住む編集者Rさんは、愛用するジャケットの身幅を妊娠中に広げ、産後に元のサイズへ戻しました。何本もの縫い目と、その内側に残された縫い代があったからできたことです。
ウエストへ少しゆとりが欲しい。バストのラインを少し詰めたい。妊娠でも、年齢でも、失恋で痩せても、少し太っても。体型が変わったからといって、好きなジャケットをすぐ眠らせなくてもよいのです。
仕上がりを待つ時間や、ブティックで相談するひとときも楽しみの一つ。手をかけるほど、愛着も深くなります。
シャネルのツイードには、ウールだけでなく、シルク、コットン、リネン、レーヨンなどを組み合わせたものもあります。太い糸、細い糸、起毛した糸、光を拾う糸。一枚にいくつもの表情が混ざります。
柔らかく、ほどけやすい布をジャケットにするには、周囲の設計も必要です。端をブレードで整え、裏地を合わせ、ポケットやボタンの位置を決める。そして代表的な一着では、裾裏のチェーンが軽いツイードへ静かな重みを加えます。
The Met所蔵の1957年頃のCHANELスーツには、従来のドレスウェイトが金色のチェーンへ置き換えられたことが記されています。
素材も丈もデザインも違うため、すべての一着が同じ仕様ではありません。チェーンの太さや裏地の色、切替の入り方に、そのジャケットだけの答えがあります。
布を置く、線を合わせる、ブレードを沿わせる。完成した一着では隠れてしまう工程が、短い映像の中で次々と現れます。
CHANEL公式「The jacket – Inside CHANEL」
ヴィンテージの価値を見るとき、年代だけを見ても答えは出ません。
そして、やはりデザイン。
素材・縫製・デザインがそろい、今も美しく着られる一着だからこそ、次の人も探します。カール・ラガーフェルド期の作品を中心に、プレオウンド市場で評価が高まるモデルがあるのも、その積み重ねです。
好きで何度も着た一着に、次の価値まで残るなら、なかなか気分のいい話です。仕立てのよいジャケットは、手をかけながら長く着るための服です。
CCマーク、グリポア、レザーや天然素材、映画で話題になった作品、チェーントリム。気になる項目からご覧ください。
0 商品