アラフィフにこそ頼れるシャネル ジャケットの秘密|CHANELのパネリング縫製

アラフィフにこそ頼れるシャネル ジャケットの秘密|CHANELのパネリング縫製

シャネルジャケットを羽織ったとき、「前を閉じていないのに、なぜこんなに形がきれいなの?」と思うことがあります。

前と同じ服なのに何となく決まらない。アラフォー・アラフィフになると、そんな小さな悩みが鏡の前に現れます。

そんな日に黒いヴィンテージのシャネルジャケットを羽織ると、インナーとデニムがユニクロの4,980円でも、いつもの服が急にきりっと見えました。

その理由はブレードやボタンだけではありません。細く分かれた身頃、縦に走る縫い目、裏地、裾のチェーン。CHANELらしい形は、見えないところでつくられていたのです。

Black vintage CHANEL jacket front and trim detail
前を開けても、肩から裾まできれいな線が残ります。

アラフォー・アラフィフこそ、シャネルジャケットのパネリングが頼れる

肩やウエストの線が変わり始めても、細かなパネルで立体をつくるジャケットなら、服のほうが今の体へきれいな線を添えてくれます。

価格だけを見れば高くても、デニムの日にも手が伸び、年齢を重ねても着る回数が増える。縫製のよい一着が「結局おトク」と感じられるのは、そんな日常が重なるからです。

90年代だけではない、ヴィンテージCHANELジャケットのパネリング縫製

布は平面、体は立体。その間をつなぐのが「パネリング」です。身頃を縦長のパーツに分け、縫い合わせながら肩、バスト、背中、ウエストの曲線をつくります。

これは90年代だけの特徴ではありません。当店が16年間扱ってきた、1980年代から2000年代、2015年頃までを含む作品にも、細かな縦の切替を持つジャケットが数多く見られます。

平面ツイードを複数のパーツへ裁断
切替縦の線で体の曲面をつくる
立体前を開けても形を保つ

今では自然に見えるこの構造も、女性が動きやすい服をつくるため、ガブリエル・シャネルが縫製へ時間をかけて追った工夫の一つでした。

パネルが多ければ、それだけで名品というわけではありません。

モデルや素材、目指すシルエットによって、パネルの数も位置も違います。細かなパーツを裁ち、左右の柄を合わせ、裏地まで組み立てた仕事は、表と裏を一緒に見ると分かります。

ジャケットを見るときは、ここを追ってみてください。
  • 肩からバスト、ウエストへ続く前身頃の縦線
  • 背中の中央と、脇側から裾へ伸びる切替
  • 表地のパネルに沿って仕立てられた裏地
  • 縫い目の内側に残された縫い代

シャネルジャケットをカーディガンのように着ると、仕立てが日常に近づく

Staff Lily styling a vintage black CHANEL jacket casually
スタッフLilyも、この一着ばかり。季節をまたいでヘビーローテーションしています。

スーツで手に入れたからといって、いつも上下をそろえなくてもいい。スカートはタートルネックや白いシャツへ。ジャケットはカーディガンのように、デニムやレザースカートへ。

仕立てがきれいなら、ほかは気負わなくて大丈夫。冒頭のユニクロ4,980円の組み合わせも、その一例です。

サクッとデニムに合わせて、あとは全部ラフでもいい。それでも肩から裾まで、本当にきれい。

モデルのビルギット・コスも、ヴィンテージのシャネルジャケットをデニムへ。仕立てがあるから、ほかを頑張りすぎなくても絵になります。

Vogue「How Top Model Birgit Kos Gets Runway Ready」

パネリングや裏地の考え方は、スーツだけでなく、ワンピースやコートにも現れます。表のデザインを楽しんだあとに縫い目を追うと、CHANELの服はもう一度おもしろくなります。

写真にも現れる、ヴィンテージCHANELジャケットの立体感

柔らかな服の撮影では、肩や裾のラインを何度も整えることがあります。ところが、状態よく残ったヴィンテージCHANELには、ハンガーへ掛けただけで形が決まり、ツイードの厚みまで写真へ現れる一着があります。

適切にケアされた個体を見ると、縫製の良さは新品のときだけの話ではないと感じます。羽織ると、体を締めつけるより、ふわっと包まれるよう。

一度この着心地を知ると、気軽な服だけでは物足りなくなる。ちょっと困った「贅沢なデメリット」です。

シャネルジャケットを裏返すと、裏地も縫い代もパネルを追っている

表地の縦線を目で追いながら裏返すと、裏地にも同じリズムが続きます。古いジャケットには、シルクの裏地へ縦のキルティング状の縫いが入るものも。内側を隠すだけでなく、柔らかなツイードと一緒に動くように考えられています。

NGV所蔵の1970年頃のCHANELスーツでは、ウールブークレ、シルク裏地、縦のキルティング、裾の金属チェーンまで確認できます。

CHANEL black tweed jacket sewing detail
黒いツイードへ、ボタンを留めていく制作風景。

そして縫い目の内側には、表から見えない「縫い代」があります。余裕が残っていれば、そこから布を出せる場合がある。将来の変化を受け止める小さな余白です。

妊娠中は大きく、産後は元へ。パリの編集者Rさんのジャケット

パリに住む編集者Rさんは、愛用するジャケットの身幅を妊娠中に広げ、産後に元のサイズへ戻しました。何本もの縫い目と、その内側に残された縫い代があったからできたことです。

ウエストへ少しゆとりが欲しい。バストのラインを少し詰めたい。妊娠でも、年齢でも、失恋で痩せても、少し太っても。体型が変わったからといって、好きなジャケットをすぐ眠らせなくてもよいのです。

仕上がりを待つ時間や、ブティックで相談するひとときも楽しみの一つ。手をかけるほど、愛着も深くなります。

お直しについて
  • 縫い代の量や構造は一着ずつ異なります。
  • CHANELブティックでの対応可否は、正規品の確認に加え、デザインや状態で異なります。
  • 希望どおりに直せるかは、実物を見てもらってからの判断です。

シャネルのツイード素材と裾チェーンが、ジャケットの落ち方を決める

シャネルのツイードには、ウールだけでなく、シルク、コットン、リネン、レーヨンなどを組み合わせたものもあります。太い糸、細い糸、起毛した糸、光を拾う糸。一枚にいくつもの表情が混ざります。

柔らかく、ほどけやすい布をジャケットにするには、周囲の設計も必要です。端をブレードで整え、裏地を合わせ、ポケットやボタンの位置を決める。そして代表的な一着では、裾裏のチェーンが軽いツイードへ静かな重みを加えます。

The Met所蔵の1957年頃のCHANELスーツには、従来のドレスウェイトが金色のチェーンへ置き換えられたことが記されています。

表にはツイードの表情。裏には、その柔らかさを支える縫製。

素材も丈もデザインも違うため、すべての一着が同じ仕様ではありません。チェーンの太さや裏地の色、切替の入り方に、そのジャケットだけの答えがあります。

CHANEL公式動画で見る、シャネルジャケットが形になるまで

布を置く、線を合わせる、ブレードを沿わせる。完成した一着では隠れてしまう工程が、短い映像の中で次々と現れます。

CHANEL公式「The jacket – Inside CHANEL」

シャネルジャケットの価値は、年代だけでは決まらない

ヴィンテージの価値を見るとき、年代だけを見ても答えは出ません。

希少性残っている数や出会いにくさ
品質素材と縫製、現在の状態
時代性その時代やコレクションの特徴

そして、やはりデザイン。

素材・縫製・デザインがそろい、今も美しく着られる一着だからこそ、次の人も探します。カール・ラガーフェルド期の作品を中心に、プレオウンド市場で評価が高まるモデルがあるのも、その積み重ねです。

価値が再評価されているCHANELプレオウンド・ヴィンテージが選ばれる理由

好きで何度も着た一着に、次の価値まで残るなら、なかなか気分のいい話です。仕立てのよいジャケットは、手をかけながら長く着るための服です。

シャネルの魅力をもっと知る、5つのストーリー

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