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深いブラウン、ネイビー、黒。そこへ赤やピンクの糸、刺繍、ガラスのきらめきが静かに差し込む。シャネルの1997年秋冬、97Aは、ひと目で華やぐというより、近づくほど豊かさが見えてくるコレクションです。
ロシア美術やフォークロアの温もりを、カール・ラガーフェルド期のシャネルは90年代末らしいすっきりした輪郭へ落とし込みました。クラシックなツイードの奥に、次の時代へ向かう少し未来的な空気が漂います。
このシーズンを語る言葉として残るのが、「ココ、モスクワへ」というイメージ。民族衣装をそのまま再現するのではなく、色、糸、花、幾何学的なモチーフだけを拾い、シャネルの服へ軽やかに溶け込ませています。
赤やブラウンの立体的なトリミング、ポンポンのような装飾、絵画を思わせる色の重なり。温かな手仕事の気配がありながら、ジャケットの線は驚くほど端正です。
97Aの面白さは、装飾と静けさが同じ服の中にあること。表情豊かなツイードやニットを使いながら、前身頃はすっきり。ジッパーやオープンフロントも加わり、重厚な素材が都会的に見えます。
色も鮮やかさだけに頼りません。チョコレートブラウン、オリーブ、ネイビー、ブラックといった深い色を土台にすることで、赤い糸や多色使いが小さな灯りのように浮かびます。
シャネルの核であるジャケットは、この年も主役です。ウエストを整えるカッティング、肩から裾へ落ちる端正な線、輪郭を保つ裾チェーン。そこへ毛糸の縁取りやパールボタンが加わり、日中のスーツがそのまま夜の装いへ近づいていきます。
メトロポリタン美術館に収蔵された同シーズンのジャケットは、ラメとガラスを使用した一着。ツイードだけではない97Aの華やかさと、ラガーフェルドが伝統的な型へ新しい素材を重ねたことがよく分かります。
当時18歳だったカレン・エルソンは、この時期にラガーフェルドの目に留まりました。彼女が今も大切にしている1997年頃のネイビーのドレスには、赤みのある小さなアップリケ。後年Vogueで、その意匠はカンディンスキーに着想を得たものだったと紹介されています。
大きな物語を、ほんの小さな色と質感に変える。その控えめな強さこそ、今見ても97Aが古びて見えない理由かもしれません。
CHANEL 1997年秋冬(97A)コレクション映像
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