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体型が少しずつ変わり、「前と同じ服なのに、何となく決まらない」と感じる日が増えてくる。アラフォー・アラフィフになると、そんな小さな悩みが鏡の前に現れます。
そんな日に90年代の黒いシャネルジャケットを羽織ると、インナーとデニムがユニクロの4,980円でも、いつもの服が急にきりっと見えました。
その理由はブレードやボタンだけではありません。細く分かれた身頃、縦に走る縫い目、裏地、裾のチェーン。CHANELらしい形は、見えないところでつくられていたのです。

肩やウエストの線が少しずつ変わり、「前と同じ服なのに、何となく決まらない」と感じ始めるアラフォー・アラフィフ世代。そんな時こそ、体を一枚の布へ押し込めず、細かなパネルで立体をつくるジャケットが頼りになります。
パリの編集者Rさんのように、暮らしや体型が変わっても、縫い代を生かしてまた着られる一着もある。体を隠すのではなく、服のほうが今の体へきれいな線を添えてくれるところが、パネリング仕立てのうれしさです。
価格だけを見れば高いジャケットでも、デニムの日にも手が伸び、年齢を重ねても着る回数が増えていく。縫製のよい一着が「結局おトク」と感じられるのは、そんな日常が積み重なるからです。
布は平面、体は立体。その間をつなぐのが「パネリング」です。身頃を縦長のパーツに分け、何枚も縫い合わせて、肩、背中、ウエストの曲線をつくります。
90年代のヴィンテージジャケットには、細かなパネルが連なる一着が多く見られます。一枚の布を無理に体へ沿わせるのではなく、切替線ごとに少しずつ角度を変える。初めて袖を通したときの「このフィット感、何?」は、そこから生まれていました。
今では自然に見えるこの構造も、女性が動きやすい服をつくるため、ガブリエル・シャネルが縫製へ時間をかけて追った工夫の一つでした。
パネルが多いだけで一着の良し悪しが決まるわけではありません。ただ、細かなパーツを裁ち、左右を合わせ、裏地まで組み立てる仕事量は、裏側を見ればよく分かります。

スーツで手に入れたからといって、いつも上下をそろえなくてもいい。スカートはタートルネックや白いシャツへ。ジャケットはカーディガンのように、デニムやレザースカートへ。
仕立てがきれいなら、ほかは気負わなくて大丈夫。冒頭のユニクロ4,980円の組み合わせも、その一例です。
モデルのビルギット・コスは、ヴィンテージのシャネルジャケットをデニムに合わせ、とても素敵にラフに羽織っています。仕立てがあるから、ほかを頑張りすぎなくても絵になる。そのバランスはこちらです。↓
Vogue「How Top Model Birgit Kos Gets Runway Ready」
パネリングや裏地の考え方は、スーツだけでなく、ワンピースやコートにも現れます。丈や素材が変われば必要な支え方も変わる。表のデザインを楽しんだあとに縫い目を追うと、CHANELの服はもう一度おもしろくなります。
表地の縦線を目で追いながら裏返すと、裏地にも同じリズムが続きます。古いジャケットには、シルクの裏地へ縦のキルティング状の縫いが入るものも。滑りのよい布で内側を隠すだけではなく、柔らかなツイードと一緒に動くように考えられています。
NGV所蔵の1970年頃のCHANELスーツでは、ウールブークレ、シルク裏地、縦のキルティング、裾の金属チェーンまで内側の構造を確認できます。

そして縫い目の内側には、表から見えない「縫い代」があります。縫い代に余裕がある服は、そこから布を出せることがある。長く着られてきた服の裏側には、将来の変化まで受け止める小さな余白が残っているのです。
妊娠中は大きく。出産後は、もう一度元の形へ。
パリに住む編集者Rさんは、愛用するジャケットの身幅を妊娠中に広げ、産後に元のサイズへ戻しました。何本もの縫い目と、その内側に残された縫い代があったからできたこと。服の構造が、ひとりの女性の時間に寄り添ったエピソードです。
「仕立てがいい」という言葉は、少し抽象的です。でもRさんの話を聞くと、急に実感が湧きます。きれいに見えるだけでなく、着る人の暮らしが変わったあとも、また袖を通せる形へ戻れる。パネリングの価値が、縫い目の数だけでは語れない理由です。
シャネルのツイードはウールだけではありません。シルク、コットン、リネン、レーヨンなどを組み合わせたものもあり、太い糸、細い糸、起毛した糸、光を拾う糸が一枚の中に混ざります。
軽く、柔らかく、ほどけやすい布をジャケットにするには、周囲の設計も必要です。端をブレードで整え、裏地を合わせ、ポケットやボタンの位置を決める。そして代表的な一着では、裾裏に金属のチェーンを縫い付け、軽いツイードが落ち着く重みを加えます。
The Met所蔵の1957年頃のCHANELスーツには、従来のドレスウェイトが金色のチェーンへ置き換えられたことが記されています。あのチェーンは、見せるジュエリーではなく、ジャケットの線を静かに整える裏方でした。
素材も丈もデザインも違うため、すべての一着が同じ仕様ではありません。だからこそ、袖を通す前に裏側まで見る時間が楽しい。チェーンの太さや裏地の色、切替の入り方に、そのジャケットだけの答えがあります。
ここまで縫い目を追ってから映像を見ると、手元の動きが前より気になります。布を置く、線を合わせる、ブレードを沿わせる。完成した一着では隠れてしまう工程が、短い映像の中で次々と現れます。
CHANEL公式「The jacket – Inside CHANEL」
シャネルのコア・ファンは、私たちプロと同じように、どの素材や仕立てが長く残るかを見ています。だから中古でも「この素材なら」と高い価格で探す人がいて、価値ある一着が次の人へ渡る循環が生まれます。
年代が経っても「価値が下がらない」と見られる素材・縫製・デザインが、シャネルには確かにあります。カール・ラガーフェルドの死後は作品としての評価がさらに高まり、金、時計、土地のように長い時間軸で価値を見る対象として、ジャケットに投資的な側面を感じる人も増えました。
価値が再評価されているCHANELプレオウンド・ヴィンテージが選ばれる理由自分の将来や先の暮らし、投資や貯蓄について真剣に考え始めるアラフォー・アラフィフ世代。だからこそ、「着る物は使い捨て」という考えから少し離れると、クローゼットだけでなく、お金や時間との付き合い方まで変わっていきそうです。好きで何度も着た一着に、次の価値まで残るなら、なかなか気分のいい話です。
CCマーク、グリポア、レザーや天然素材、映画で話題になった作品、チェーントリム。気になる項目から、それぞれの詳しい記事をご覧いただけます。
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