女性の魅力を160%アップ!シャネル「グリポア」の宝石ボタン、その美しさの秘密

女性の魅力を160%アップ!シャネル「グリポア」の宝石ボタン、その美しさの秘密
GRIPOIX × CHANEL

シャネルの洋服を見ていて、ボタンだけで目が止まる一着があります。赤、エメラルド、サファイアのような色が、金色の枠の中でとろりと光る。あの宝石のような表情を語るときに登場するのが、グリポアです。

グリポア(Gripoix/グリポワと表記されることもあります)は、メティエダール・コレクションの別名ではありません。19世紀のパリに始まる工房名であり、そこから受け継がれてきたガラス装飾を指す呼び名です。

メティエダール作品に登場することはありますが、二つは別の話。この記事では、シャネルのジャケットやカーディガンを小さなジュエリーへ変えてしまう、グリポアそのものに絞って見ていきます。

シャネルのグリポアとは?宝石ではなく、色をつくるガラス

Maison Gripoixは、オーギュスティーヌ・グリポワが1869年にパリで創業した工房です。特徴は、溶けたガラスを型へ直接流し込む、独自のパート・ド・ヴェール。透明、半透明、不透明を使い分けながら、宝石のような奥行きのある色と形を生み出します。

天然石をそっくりに見せることだけが目的ではありません。ガラスだからこそ、ルビーのような赤、エメラルドのような緑、深いブルーを自由に組み合わせられる。少し丸みのあるカボション、花びら、十字、雫のような形も、グリポアらしい魅力です。

宝石の代用品として見るより、
「ガラスだからできる色のジュエリー」と考えると、グリポアは急に面白くなります。
1869パリでMaison Gripoixが創業。工房の技は世代を越えて受け継がれました。
1920s–30sCHANELとグリポアの協働が広がり、コスチュームジュエリーに足跡を残します。
ca. 1938The Metには、CHANELとGripoixによる赤い花のネックレスが所蔵されています。

CHANELとグリポアを結んだ、1920〜30年代のジュエリー

ガブリエル・シャネルは、上質な洋服に本物の宝石だけを合わせる、という当時の常識を軽やかに崩しました。ファインジュエリーとコスチュームジュエリーを重ね、飾ることそのものを楽しんだのです。

1920年代にはシャネルとグリポアの協働が始まったとされ、1930年代には確かな作品が残ります。シャネルはオーギュスティーヌの娘シュザンヌ・グリポワに、ビザンチンの古い宝飾品を思わせるデザインを依頼しました。整いすぎた宝石ではなく、発掘されたばかりのような、少しいびつで力のある色。その感覚が、シャネルのシンプルな服によく似合いました。

MUSEUM NOTE

The Metropolitan Museum of Artが所蔵する1938年頃のネックレスでは、半透明の赤い花が金属の枠の中に浮くように連なっています。ガラスの色と金属の縁取り、その両方で立体感をつくる。これがグリポアの見どころです。

CHANEL ivory tweed jacket with jewel buttons close-up
TC JAPAN取扱いアーカイブ。ツイードに並ぶ宝石ボタンのディテール。

グリポア宝石ボタンが、ツイードジャケットをジュエリーに変える

グリポアと聞くとネックレスやブローチを思い浮かべますが、シャネルの洋服好きにとって見逃せないのはボタンです。

ツイードは、糸の色と凹凸が複雑な素材。そこへ透明感のあるガラスと金色の枠が加わると、光が当たるたびに表情が変わります。前を閉じればボタンが縦に並び、開けて着れば襟元のアクセントになる。小さな部品なのに、服全体の格を決めてしまうのです。

カーディガンでは、やわらかな編み地と重みのある宝石ボタンの対比が魅力。スーツなら、ジャケットの前身頃と袖口に同じ意匠が繰り返され、アクセサリーを足さなくても装いが完成します。

CHANEL red glass jewel button on multicolor tweed close-up
CHANEL square jewel button with amber black and gold glass details
CHANEL flower-shaped jewel buttons on red and white tweed close-up
CHANEL multicolor glass CC brooch on white background
赤、緑、青、オレンジ。色ガラスの組み合わせが生む、グリポアらしい華やかさ。
ここは大切です

シャネルのカラーストーン風ボタンが、すべてMaison Gripoix製とは限りません。シャネルは複数のジュエリー職人や工房と仕事をしてきました。見た目だけで断定せず、年代、資料、刻印、商品説明、ボタンの状態を一緒に確認します。

ヴィンテージのシャネルで、グリポアボタンを見るポイント

「古いほど上質」「グリポアなら必ず値上がりする」とは限りません。ヴィンテージやプレオウンドの価値は、デザインだけでなく、ボタンが揃っているか、ガラスと金属枠の状態はどうか、洋服そのものがきれいに保たれているかで大きく変わります。

1.ガラス部分欠け、ヒビ、強い曇りがないか。色の揺らぎとダメージは分けて見ます。
2.金属の枠メッキの摩耗、緑青、変形、ガラスを留める部分の緩みを確認します。
3.ボタンの数前身頃だけでなく袖口まで揃っているか。交換されたボタンが混ざっていないかも大切です。
4.洋服とのバランス重いボタンの周囲にツレや伸びがないか。前を閉じたときのラインも見ます。

Gripoix Parisは、50年以上前のジュエリーを修復することも珍しくないと案内しています。長く残せる工芸であることは魅力ですが、衣服に付いたボタンの修復可否は一着ごとに異なります。購入前には、現在の状態を実物写真で確認するのがいちばんです。

動画で見る、グリポア工房の職人技

文章で「ガラスを流し込む」と聞くより、工房の手元を見る方がずっと早いかもしれません。色のあるガラスが、金属の枠と組み合わされ、ジュエリーへ変わっていく様子をご覧ください。

Gripoix Parisのチャンネルで公開されている2014年のドキュメンタリー。ガラス、金属枠、組み立てまで、完成品の奥にある手作業が見えてきます。

V&Aで見る、CHANELコスチュームジュエリーの立体感

こちらはグリポアだけを解説する映像ではありませんが、CHANELのネックレス、ブローチ、イヤリングを学芸員が間近で扱っています。石の厚み、チェーンの重なり、色の組み合わせを見ると、シャネルがジュエリーを「服の仕上げ」として考えていたことがよく分かります。

V&A「Handling CHANEL jewellery」。音と接写で、CHANELコスチュームジュエリーの量感まで楽しめる映像です。

グリポア付きジャケットは、ボタンを主役に着る

宝石ボタンが華やかな一着は、アクセサリーをたくさん足さなくても十分です。むしろ、ほかを少し引くとボタンの色がきれいに見えます。

デニムで外すツイードジャケットの華やかさを、シンプルなデニムやパンツで軽く見せます。
色を一つだけ拾うボタンの赤や緑を、靴やバッグで小さく繰り返すと、全体がまとまります。
首元は静かに大ぶりのネックレスを控え、イヤリングや細いチェーンだけにすると上品です。

ワンピースにカーディガンを重ねるときも同じ。グリポアボタンをジュエリーとして考えれば、コーディネートは難しくありません。

グリポアの魅力は、金額だけではありません。
一着の服に、ジュエリーを縫い付ける。
その大胆な発想が、今見ても新鮮なのです。
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