- 通常価格
- ¥20
- セール価格
- ¥20
- 通常価格
- ¥20
- 価格
- あたり
シャネルの服を見ていると、近づいてもう一度確かめたくなる一着があります。糸の間からパールがのぞき、光が動くたびに刺繍の表情が変わる。その奥で、長くCHANELのものづくりを支えてきたのがメゾン・ルサージュです。
名前は聞いたことがあっても、刺繍の工房なのか、ツイードの工房なのか、少し分かりにくい存在かもしれません。実はどちらも正解。華やかな装飾と、服の土台になる生地、その両方を手がけています。
ルサージュの前身は、1858年に始まったパリの刺繍工房ミショネです。1924年、アルベールとマリー=ルイーズ・ルサージュが工房を引き継ぎ、メゾン・ルサージュが誕生しました。
1949年には、当時20歳だった息子フランソワ・ルサージュが工房を継承。オートクチュールのドレスからプレタポルテまで、デザイナーのアイデアを糸、ビーズ、スパンコールで立体にしてきました。
1983年 カール・ラガーフェルドの就任とともに、CHANELとの協業が始まる
1996年 ルサージュにテキスタイル工房が誕生
1998年 シャネルのプレタポルテへツイードを提案
2002年 CHANELのメティエダールに加わる
2021年 パリの職人拠点「le19M」へ工房を集約
つまり、ルサージュは「シャネルだけの工房」から始まったわけではありません。長い刺繍の歴史を持つメゾンと、カール・ラガーフェルド時代のCHANELが出会い、現在まで続く関係になりました。
ルサージュの刺繍は、完成した服へそのまま飾りを縫い付けるところから始まるのではありません。布を木枠に張り、襟、前身頃、ドレスの裾など、服になる前の平らなパーツへ刺繍を施します。
代表的な道具が、先端に小さな鉤のあるリュネビル・クロシェ。職人は布の裏側からチェーンステッチを進め、ビーズやスパンコールを一つずつ留めていきます。針で作るステッチも組み合わせ、光る部分と静かな部分、色の濃淡まで調整。デザインによっては、完成まで数百時間を要します。
刺繍されたパーツがシャネルのアトリエへ戻り、立体の服へ仕立てられたとき、ようやく全体像が見えてきます。ランウェイで一瞬にして目を奪う装飾も、出発点は静かな工房で積み重ねられた小さな手仕事です。
ルサージュのもう一つの顔が、シャネルのジャケットやスーツを彩るツイードです。1996年にテキスタイル工房を設け、1998年からCHANELのプレタポルテへ生地を提案。2008年以降はオートクチュールのツイードも手がけています。
ウール糸だけで端正に織るのではなく、ファンシーヤーン、パール、スパンコール、オーガンジーのリボン、レース、シフォン、時にはデニムまで組み合わせるのがルサージュらしさ。シャツ生地を裂いたもの、チェーン、テープ、毛糸、プラスチック素材まで登場することもあります。「それを織るの?」と驚く材料が、仕上がるとどこか優しく上品な表情になるのが面白いところです。
新しいツイードのサンプルは、工房の織機で一枚ずつ手織りされます。そのサンプルを基に、必要な長さの生地へ仕上げていくのは南西フランスの織物工房ACT3。すべてを「最初から最後まで手織り」と一括りにせず、発想と試作、安定した生産をそれぞれの職人がつないでいるところにも、メティエダールの奥深さがあります。
TC JAPANスタッフが持っている1994年のルサージュジャケットは、いまも前後の縫い合わせが大きくねじれず、形を保っています。もちろん、すべての一着が同じとは限りません。素材や保管、着用回数で状態は変わります。それでも、長く着た一着を床へ平らに置き、前ボタンを留めたときの線がきれいに残っていると、手仕事の確かさをしみじみ感じます。
リピーター様の中には、「もうルサージュだけを集めたい」と話す方もいます。一着ごとに素材の組み合わせも表情も違い、着る日はもちろん、クローゼットで眺めているだけでもうれしくなる。しかも、難しく考え込まなくても、さっと羽織るだけで装いがまとまりやすい。ルサージュ作品は、業界で「中古でも価値が下がらない」と言われるほど、プレオウンド市場でも評価され続けています。
そして、やっぱり手元を見ると驚きます。薄いシルクオーガンジーへ一粒ずつビーズを留める様子は、細かすぎて、見ているだけで肩が凝りそうです。
一つ目は、CHANEL公式による2019年春夏オートクチュールの制作映像です。ルサージュだけを追った動画ではなく、シャネルのアトリエとメティエダール全体を紹介したものですが、このコレクションではルサージュが花の刺繍を手がけています。
もう一つは、ヴィクトリア&アルバート博物館による「Lesage and Balenciaga」。CHANEL作品ではありませんが、ルサージュの職人がバレンシアガの1967年イブニングコートを再現し、図案を布へ写してから、ビーズ、スパンコール、クリスタルを重ねていく工程がよく分かります。
CHANEL公式|2019年春夏オートクチュールのアトリエとメティエダール
V&A Museum公式|Lesage and Balenciaga
ルサージュには、7万5000点を超える刺繍サンプルが保管されています。色、糸、光の反射、立体感を試した小さな見本が並ぶ、世界最大規模のクチュール刺繍コレクションです。
ただ古い作品を保存するだけの場所ではありません。過去の技法を手がかりに、新しい素材や色を試し、次のコレクションへつなげていく。アーカイブは歴史資料であると同時に、今も増え続けるアイデア帳なのです。
CHANELは2002年から、専門工房の技を主役にしたメティエダール・コレクションを毎年発表しています。ルサージュの刺繍とツイードに加え、デリュのボタン、ルマリエの羽根と花、マサロの靴、メゾン・ミッシェルの帽子。それぞれの技が一着の中で出会います。
ランウェイでは、ついシルエットやモデルに目が行きます。でも画像を拡大してみると、主役が変わることがあります。ポケットの縁を走るブレード、光を受ける小さなビーズ、色を一段深く見せる糸。ルサージュの仕事は、遠くからも美しく、近くで見るほど面白い。その二つを同時に叶えてくれます。
プレオウンドのルサージュ作品を見るなら、全体写真だけで決めず、細部の画像もゆっくり確認してみてください。
袖口 手が触れやすく、刺繍やブレードの状態が見えやすい場所
前立てとポケット ツイードの糸、装飾、縁取りの細かさが集まる場所
ボタンの周囲 開閉による負荷や、補修の有無を確認しやすい場所
ファンシーツイードは、もともと糸の太さや表情に変化がある素材です。糸が見えるだけで傷みと決めつけず、素材本来の仕上がりなのか、着用による変化なのかを、商品説明と拡大写真で見比べるのがポイントです。
0 商品